第9回「CHAPTER8:地方税財政と予算」

 

■事前準備

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■レジュメ

1.国際比較から見た日本の地方税財政

〇「脆弱な地方自治」という神話
・地方政府の支出の大きさ
→国際比較(図8-1)を参照
→中央政府からの税転財源により、地方政府が事務を行うのが日本のやり方
=「日本の地方政府は、政策実施を通じて公共セクター全体のあり方を左右している」
 ・「今後、10万円一括給付に必要な補正予算成立に向け、議会と調整いたします」が重要
→財源は中央政府だが、事務は地方政府という構図の典型
→事務の実施は地方政府が行うため、地方政府における議会での調整が必要になる
・日本の公共セクターは、中央政府だけでは全体像を理解できない

〇マーブルケーキ・モデル
・レイヤーケーキ・モデル=中央政府と下位政府で権能と実施施策を明確に分離(アメリカなど)
→日本においても、年金(旧社会保険庁、日本年金機構、年金事務所)と防衛(防衛省、自衛隊)だけはこのモデル(下位政府が関与しない)
・マーブルケーキ・モデル=両者が協働して施策を実施(日本など)
→日本の地方政府は活動量も、活動範囲も広い

2.歳出

〇目的別歳出決算額
・「どのような施策や政策に予算を支出しているのか」
・都道府県は教育費の支出が多く、市町村では民生費(児童福祉、高齢者福祉など)の支出が大きい
・重複が全くないわけではないが、目的別に見ると所掌事務の違いが反映されている

○性質別歳出決算額
・「特定の政策遂行のためにどのように予算を支出しているか」
・都道府県は人件費、補助費等(公営企業に対する負担金、各種団体への補助金など)、公債費、普通建設事業費(道路、橋梁、学校、庁舎などの建設などの費用)が大きい
・市町村は扶助費(生活保護費、児童手当など)、人件費、普通建設事業費が大きい

3.歳入

〇地方歳入の手段と全体的な特徴
・歳入を増やす3つの手段
→自主財源の確保、中央政府からの移転財源の増加、借入金や地方債の発行
・歳入の割合
→地方税収がもっとも大きく、次に地方交付税が大きい(いずれも使途の特定がない財源=一般財源)
→国庫支出金などの補助金=特定財源(義務教育費負担金、生活保護負担金など)

○地方税
・地方税収は4割前後
→先進国のなかで日本の地方税収が低いわけではない(OECD平均は3割強)
・税目は多様
→事業税、消費税の地方部分(現在は2.2%)、固定資産税など
・道府県は道県民税(住民税+法人住民税)、地方消費税、事業税の割合が大きい
・市町村は市町村民税、固定資産税で9割
→比較的税収は安定している
→東京23区の固定資産税は東京都が徴収
・税源が偏っているため、地域差が大きい
→東京都が突出している

○税転財源
・地方交付税+国庫支出金
→ナショナル・ミニマムの達成に必要とされる
・地方交付税の算出
→基準財政需要額から基準財政収入額を引いた「財源不足額」が交付額の94%
→残り6%は「特別交付税」として緊急の財政需要に対応
→東京都は財源が十分にあるため、不交付団体
・国庫支出金
→補助金、負担金、委託金などの総称
→2004年~2006年にかけて行われた「三位一体改革」により、国庫支出金の比率は低下

○地方債の発行
・原則非募債主義
→実際は適債事業列挙主義を採用し、地方債を発行することができている
→地方交付税不足を補う。交付税の「後払い」

4.予算をめぐる問題

〇議会での予算審議の慌ただしさ
・ボトム・アップとトップ・ダウンの同時進行
→財政部門が財政需要に応じた歳出見積もりをしつつ、税務部門が歳入見積もりをしている
→年末から年始にかけての予算折衝
・中央政府の動向に影響を受ける予算編成
→税制改正など
→中央省庁からの情報収集が重要
・地方議会での審議時間の少なさ
→2月or3月に審議し、4月に予算執行というスケジュールになりがち

〇課税自主権の政治的行使
・企業への課税の方法
→自治体間で課税方法が異なると、企業の競争力に影響する
・「シティ・リミッツ」論
→企業を優遇し、社会的弱者を置き去りにしてしまう

〇ベイルアウト期待行動の阻止
・ベイルアウト期待行動=事後的な財政救済措置
→地方債が発行され続け、財政赤字が縮小しない放漫な財政になる
→債務不履行のリスク
・地方財政健全化法
→一般会計から特別会計までをチェックすることのできる財政指標の公開の義務づけ
→実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率、将来負担比率の4つの項目
Cf.「新宿区の財政」(令和3年3月、PDF)

Column8「ふるさと納税狂想曲」
・大都市圏の人が出身自治体に「恩返し」する趣旨
・実態は、返礼品競争になってしまった(ex.大阪府泉佐野市
→2017年から返礼品規制+2019年に地方税法改正による規制強化(「返礼品は寄付額の3割以下とし、地場産品に限る」)
・都市部の自治体は、税収が流出する状況が続いている
→税法的には筋が悪い方法

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