第12回「CHAPTER11:子育て行政」

 

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■レジュメ

1.待機児童問題から考える子育て行政

〇少子化時代の待機児童というパズル
・背景:共働き世帯の増加(需要側)、保育所/士の供給の難しさ(供給側)
→保育所の定員数>待機児童数であるため、一部地域におけるミスマッチが待機児童を生じさせている
→保育所は増加傾向にあるが、ニーズの増加に供給が追い付いていない
・高止まりする待機児童数
→2015年度時点に200人以上いる自治体は29
→上位から世田谷区、岡山市、那覇市、市川市、江戸川区、板橋区、沖縄市、大分市、高松市、渋谷区の順で多い(多くは23区、政令市、ベッドタウン)
・幼稚園、認可外保育所という選択肢
→幼稚園ではフルタイム勤務が難しく、認可外保育所は認可保育所に比べて事故発生率が高いという課題

〇保育所建設反対運動
・保育所の新設という手段
→地域住民の反対運動に直面することもある
→NIMBYとして認識される保育所

・2012年8月に成立
→以降都度制度改正
・制度のねらい:現物給付から現金給付へ、幼保連携型認定こども園の拡充


2.未就学児と幼稚園・保育所
〇幼稚園と保育所
・幼稚園は文科省管轄、保育所は厚労省管轄
→最近は幼稚園で預かり保育を実施したり、保育所で教育活動を実施したりするなど、活動自体は類似性を増している
→幼稚園全体の8割以上が預かり保育を実施(2014年度)
・人口規模の小さい自治体では保育所のみ設置の傾向

〇子育て行政の対象者数
・3歳児以降、保育所や幼稚園に入所・入園する傾向
→4歳/5歳児はほとんどが在所・在園する
・保育所の児童数は増加、幼稚園の園児数は減少
→保育所へのニーズの高まり

〇子育て行政施設数
・公立の保育所数が減少し、私立の保育所数が増加
・幼稚園数は国公私ともに減少傾向
・認定こども園、幼保連携型こども園数は増加傾向
→子ども・子育て支援新制度の効果が出ている
→私立幼稚園から認定こども園に移行したケースは多くない(多くは私立保育所からの以降)

3.保育士と幼稚園教諭
〇保育士や幼稚園教諭になるには
・保育士数は増加
→公立では減少し、私立で増加
・幼稚園教員数は減少
→幼稚園数の減少と同じ傾向
・幼保連携型認定こども園の急増
→幼稚園教諭と保育士資格のダブル免許のニーズの高まり
→幼保連携型認定こども園ではダブル免許が必須(2019年度までは経過措置)

〇保育士の労働環境と保育士不足
・保育士の不足は全国的
→東京が一番有効求人倍率が高い。倍率1以下なのは山梨と群馬(2015年時点)
・保育士としての就業希望の低さ
→指定施設の半数は保育所に就職しない
→保育士資格保有者で、保育士として就業を希望するのは5割
・長時間労働
→民間はおよそ12時間、公立は11時間ほどの時間開所している
→早朝保育や延長保育などにより長時間化している
→保育士への負担が大きく、政策的介入の余地も少ない


4.子育て行政に関する財政
・保護者負担をいかに減らせるか
・保育士の低賃金
→同世代の平均や幼稚園教諭と比べて明らかに低い
→介護職よりも低賃金(保育士は夜勤がないから?)


5.少子化を克服するための政策はあるのか
〇待機児童問題を解決した先にあるもの
・子育て世代と、子育て世代以外をターゲットとした政策の両立の難しさ
→保育所建設ニーズと、反対運動
→子育て世帯を優遇してもすぐに税収増にはならない
・「解消」と福祉の磁石効果
→低所得の世帯が解消自治体に集まると、自治体の負担になる
・自律性Ⅰと自律性Ⅱのバランス
→子育て行政では中央からの財政支援は手厚くないため地方政府の自由度を発揮しやすい(自律性Ⅱ)
→しかし、これは財政状況によって変化する(自律性Ⅰ)
→東京都のように財政力が強ければ応答できるが、財政力に乏しい地方政府は住民ニーズに応答することが難しい(中央政府の支援が薄い+地方独自の財源がないという事情)

〇子ども・子育て支援新制度はどうなるのか
・地方政府は中央政府からの財政支援を期待できない
→そもそも保育所、幼稚園いずれも私立のシェアが大きく、公的な支援は乏しい
・子ども子育て支援新制度により、乏しい財政支援の脱却を目指す
→消費税増税による増収分を財源として見込んでいるため
→しかし、増税のタイミングは延期+増税分で財源を賄い続けられるのか?
・上乗せの対極にある「引き下げ」
→保育所最低基準を条例により引き下げることが可能になっていた
→待機児童を解消させたいというニーズへの応答(自律性Ⅰ)ゆえではあるが、「引き下げ」には限界がある
→「上乗せ・横出し」を行う傾向のある学校教育とは対照的



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