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「#スペースで地方自治論 」講義用ページ

 ■「#スペースで地方自治論 」とは 2021年秋~2022年冬にかけてTwitterのSpaces(スペース)機能を使ってバーニング( @burningsan )が勝手に開講する講義 参加は自由です。スペースへの出入りも自由です。放送大学の講義をテレビもしくはラジオで受講する感覚でお使いいただければと思います。時間は各回90分前後が目安 本企画のきっかけとなった受講生と相談したところ、スピーカーは採用せず進行することにしました。リスナーとしての参加やコメントの参加は自由です(9/13追記) 教科書や副読本を採用、提案しますが、こちらを購入することを強制しているわけではありません(出版社との利益相反もありません) リスナーの方がコメントや質疑をしやすいようにハッシュタグを採用する予定です。ハッシュタグ #スペースで地方自治論  をご確認ください Spacesの録音機能を使い、配信から一か月はウェブ上に録音されるようになりました。スマホアプリやブラウザからお聞きできます(録音公開期間は終了しました) ■テキスト メインテキストとして、有斐閣ストゥディアの入門書シリーズ、『 地方自治論 ――2つの自律性のはざまで 』(2017年)を採用  副読本として、以下を提案。  真渕勝(2020)『 行政学新版 』有斐閣  曽我謙悟(2019)『 日本の地方政府 』中公新書  曽我謙悟(2013)『 行政学 』有斐閣  北山俊哉・稲継裕昭編(2021)『 テキストブック地方自治 第3版 』 ■講義日程 リンク先は各回のレジュメです ガイダンス/はしがき (9月24日) CHAPTER1「首長」 (10月1日) CAHPTER2「議会」 (10月7日) CAHPTER3「地方公務員」 (10月14日) CAHPTER4「住民による統制:選挙と住民投票」 (10月30日) CAHPTER5「条例制定」 (11月1日) CAHPTER6「地方自治体の組織編成」 (11月17日) CAHPTER7「地方自治体の権能と大都市制度」 (12月4日) CAHPTER8「地方税財政と予算」 (12月17日) CAHPTER9「中央政府と地方政府」 (1月14日) CAHPTER10「学校教育」 (1月27日) CAHPTER11「子育て行政」 (2月7日) CAHPTER12「...

第13回「CHAPTER12:高齢者福祉」

  ■事前準備 テキストの該当ページを読んでおいてください P.214の宿題(エクササイズ2)の確認 スペースの録音はこちらから → ■レジュメ 1.高齢化が変える日本の姿 〇高齢化社会の状況 ・2015年時点で3392万人が高齢者(高齢化率は26.7%) →75歳以上は1641万人 参考:生産年齢人口は7708人、年少人口は1611万人 ・高齢化率最大は秋田県(32.6%)、最小は沖縄県(19.0%) ・「高齢者のいる世帯の割合」は2014年に46.7% ・日常生活に支障のある高齢者の割合は25% ・2000年度から「介護保険制度」がスタート →要介護(1-5)・要支援(1-2)の程度に応じて施設・居宅サービスを受けられる ・主な介護者は同居者 →配偶者、子が多い。「老々介護」も多い ・65歳以上の被保険者数(第1号被保険者)は2015年に3308万人 →要介護(要支援)認定者数は608万人 →介護サービス受益者は512万人 ・介護保険に関する総費用は2016年度に10.4兆円 →2025年度に18-21兆円まで増加する見込み 2.重い市町村の責任をサポートするには 〇介護保険制度 ・2000年度からスタート →保険方式を採用し、広く費用負担を求めている ・介護保険の地方分権化 →設置基準が都道府県条例で、居宅サービス事業者の指定と監督権限は政令市と中核市 ・保険者は市町村 →広域連合や一部事務組合の余地もある ・費用負担の仕組み →40歳以上の人が保険料を支払う →利用者は1割を負担する →残りの9割を保険料と税金で負担する(税負担は国と地方が半分ずつ。地方は都道府県と市町村が1/2ずつ) ・介護保険料は上昇傾向 →市町村格差が目立ってきた(2,800円の鹿児島県三島村、8686円の奈良県天川村) →4,501円~6,000円の市町村が約8割 ・財政安定化基金 →介護保険特別会計の赤字を補填 →結果的に、市町村が保険料収入の確保を行うインセンティブに欠ける制度設計 ○介護サービスと地方自治体の役割 ・サービスは5種類+1 →訪問、通所、短期滞在、居住、入所(ひとつの施設内で複数のサービスを提供する場合もある)+地域密着型サービス(2005年に創設) →サービスの種類によって事業主体の指定・監督を行う主体が異なる →たとえば市町村は地域密着型サービスの指定...

第12回「CHAPTER11:子育て行政」

  ■事前準備 テキストの該当ページを読んでおいてください スペースの録音はこちらから → ■レジュメ 1.待機児童問題から考える子育て行政 〇少子化時代の待機児童というパズル ・背景:共働き世帯の増加(需要側)、保育所/士の供給の難しさ(供給側) →保育所の定員数>待機児童数であるため、一部地域におけるミスマッチが待機児童を生じさせている →保育所は増加傾向にあるが、ニーズの増加に供給が追い付いていない ・高止まりする待機児童数 →2015年度時点に200人以上いる自治体は29 →上位から世田谷区、岡山市、那覇市、市川市、江戸川区、板橋区、沖縄市、大分市、高松市、渋谷区の順で多い(多くは23区、政令市、ベッドタウン) ・幼稚園、認可外保育所という選択肢 →幼稚園ではフルタイム勤務が難しく、認可外保育所は認可保育所に比べて事故発生率が高いという課題 〇保育所建設反対運動 ・保育所の新設という手段 →地域住民の反対運動に直面することもある →NIMBYとして認識される保育所 〇 子ども・子育て支援新制度 ・2012年8月に成立 →以降都度制度改正 ・制度のねらい:現物給付から現金給付へ、幼保連携型 認定こども園 の拡充 2.未就学児と幼稚園・保育所 〇幼稚園と保育所 ・幼稚園は文科省管轄、保育所は厚労省管轄 →最近は幼稚園で預かり保育を実施したり、保育所で教育活動を実施したりするなど、活動自体は類似性を増している →幼稚園全体の8割以上が預かり保育を実施(2014年度) ・人口規模の小さい自治体では保育所のみ設置の傾向 〇子育て行政の対象者数 ・3歳児以降、保育所や幼稚園に入所・入園する傾向 →4歳/5歳児はほとんどが在所・在園する ・保育所の児童数は増加、幼稚園の園児数は減少 →保育所へのニーズの高まり 〇子育て行政施設数 ・公立の保育所数が減少し、私立の保育所数が増加 ・幼稚園数は国公私ともに減少傾向 ・認定こども園、幼保連携型こども園数は増加傾向 →子ども・子育て支援新制度の効果が出ている →私立幼稚園から認定こども園に移行したケースは多くない(多くは私立保育所からの以降) 3.保育士と幼稚園教諭 〇保育士や幼稚園教諭になるには ・保育士数は増加 →公立では減少し、私立で増加 ・幼稚園教員数は減少 →幼稚園数の減少と同じ傾向 ・幼保連携型認定こども園の急...

第11回「CHAPTER10:学校教育」

  ■事前準備 テキストの該当ページを読んでおいてください 宿題はありません ■レジュメ 1.学校教育の担い手は誰か 〇学校教育の政府間関係 ・市町村、都道府県、文科省それぞれが権限を持つ(融合型) =政府間で権限が分散されている →特に都道府県は教職員給与を負担し、人事権限を持っている ・義務教育 →学校建設・運営は市町村だが給与負担と人事管理は都道府県 →教職員は身分上は市町村職員だが、都道府県職員としての意識が強い →政令市は給与負担も担う(2017年度~) ・高校/特別支援学校 →原則として都道府県だが、市町村立の学校もある 〇融合的政府間財政関係 ・学校における財政移転制度 ex.教職員の給与、学校建設費 →文科省予算の3割は義務教育国庫負担金 ・地方教育費 →総額約16兆8000億のうち60%は学校教育費。さらにその5割が義務教育 →他の使途として公民館、図書館の整備など(社会教育費) 2.児童生徒数・学級数・学校数 〇学校教育に対する少子化の影響 ・「児童生徒」という顧客が大幅に減少しているのが現在 →学級数の減少、教員数の減少、学校の統廃合etc. ・義務標準法 →公立小中学校の教員数の定員を定める法律 →この法律があるため、大幅な教員削減は難しい →結果的に教員以外の職員削減や統廃合が進められる 〇学級数 ・1学年あたり40人(小学校は35人)が基本 →自治体によっては独自に教員を雇用して少人数学級を編制(上乗せ/横出し) →現実には少人数学級編制を行わなくてよいほど児童生徒数が減少している ・学級数の減少傾向 →児童生徒数の減少幅より、学級数の減少幅が小さい。中学校では微増 →背景に特別支援ニーズの高まりによる特別支援学級数の大幅な伸びがあるのでは →多様な対象を考慮した義務教育へと変容している 〇学校数 ・小中学校数の減少傾向 →公立小学校は約2万、中学校は1万以下に →減少の要因は統廃合(毎年200~400が統廃合) →通学時間の増加と、それへの対応が必要 ・市町村と小中学校の関係 →市町村の域内に小学校が1校だけ、中学校が1校だけ、というケースが増加 →「学校選択制」が政策の目玉になるのは都市部に限られる →将来的には複数の市町村が学校を共同で運営することも検討されるべき →「一部事務組合立学校」はすでに複数存在している ex. 高...

第10回「CHAPERT9:中央政府と地方政府」

  ■事前準備 テキストの該当ページを読んでおいてください 宿題(p.155のエクササイズ2)の確認 ■レジュメ 1.比較の枠組み 〇主権のあり方:単一主権制と連邦制 ・単一主権制 →主権と憲法を持つ中央政府が、下位レベルの政府の改廃存置を決定できる政府システム =地方政府は中央政府の議会が制定した法令に存在根拠や権能の根拠がある =地方政府は、あくまで中央政府によって認められた自律性の範囲内で政策決定や実施が可能 ・連邦制 →もともと主権と憲法を有する州や邦といった地域単位がその主権の一部を移譲して連邦政府を設立する政府システム →外交、安全保障、国境管理などの権能を限定的に連邦政府に委ね、残りの大多数の権能を邦や州が留保している 〇権能付与のあり方:制限列挙方式と概括例示方式 ・制限列挙方式 →地方政府は中央の法令で授権された事務権能しか実施してはいけないという権限配分方式 →地方政府の判断が正しくても、中央政府の意向に反すると違法になることも(p.160の大ロンドンの例) ・概括例示方式 →地方政府の事務権能が個別に法令で列挙されているわけではなく、例示的あるいは概括的にしか示されていない権能配分方式 →二重行政が起こりうる根拠 →上乗せ・横出し規制の実施根拠 〇集権ー分権軸と融合―分離軸(天川1986のモデル)、集中ー分散軸と統合―分立軸 ・集権ー分権軸 集権:地方に関する意思決定を中央政府が行い、地方や住民の意思は制限 分権:中央政府の意思をできるだけ排除し、地方や住民の意思決定を優先 ・融合ー分離軸 融合:中央政府の所管事務を地方政府の区域内で地方政府が中央政府とともに実施 分離:中央政府の所管事務である限り、地方政府は関与しない ・実際に当てはめてみると イギリス→集権・分離 アメリカ→分権・分離 日本(~1990年代)→集権・融合 日本(2000年~)→分権・融合 ・ほかにも西尾モデル(1990) →集中―分散、統合ー分立軸をとることにより、政策実施を担う機関がどの範囲の所管を扱い、どの程度多元的であるかを示す 2.中央地方関係の一般的な理論 〇市場保全型連邦主義 ・中央政府の関与を極力制限し、地方にできるだけ大きな財政的規律を与える重要性を強調(分離型中央地方関係を想定) →中央政府がベイルアウトを行わないようにすると、下位政府の財政の健全...

第9回「CHAPTER8:地方税財政と予算」

  ■事前準備 テキストの該当ページを読んでおいてください ■レジュメ 1.国際比較から見た日本の地方税財政 〇「脆弱な地方自治」という神話 ・地方政府の支出の大きさ →国際比較(図8-1)を参照 →中央政府からの税転財源により、地方政府が事務を行うのが日本のやり方 =「日本の地方政府は、政策実施を通じて公共セクター全体のあり方を左右している」 Cf. 子育て世帯に対する10万円給付(神戸市)  ・「 今後、10万円一括給付に必要な補正予算成立に向け、議会と調整いたします」が重要 →財源は中央政府だが、事務は地方政府という構図の典型 →事務の実施は地方政府が行うため、地方政府における議会での調整が必要になる ・日本の公共セクターは、中央政府だけでは全体像を理解できない 〇マーブルケーキ・モデル ・レイヤーケーキ・モデル=中央政府と下位政府で権能と実施施策を明確に分離(アメリカなど) →日本においても、年金(旧社会保険庁、日本年金機構、年金事務所)と防衛(防衛省、自衛隊)だけはこのモデル(下位政府が関与しない) ・マーブルケーキ・モデル=両者が協働して施策を実施(日本など) →日本の地方政府は活動量も、活動範囲も広い 2.歳出 〇目的別歳出決算額 ・「どのような施策や政策に予算を支出しているのか」 ・都道府県は教育費の支出が多く、市町村では民生費(児童福祉、高齢者福祉など)の支出が大きい ・重複が全くないわけではないが、目的別に見ると所掌事務の違いが反映されている ○性質別歳出決算額 ・「特定の政策遂行のためにどのように予算を支出しているか」 ・都道府県は人件費、補助費等(公営企業に対する負担金、各種団体への補助金など)、公債費、普通建設事業費(道路、橋梁、学校、庁舎などの建設などの費用)が大きい ・市町村は扶助費(生活保護費、児童手当など)、人件費、普通建設事業費が大きい 3.歳入 〇地方歳入の手段と全体的な特徴 ・歳入を増やす3つの手段 →自主財源の確保、中央政府からの移転財源の増加、借入金や地方債の発行 ・歳入の割合 →地方税収がもっとも大きく、次に地方交付税が大きい(いずれも使途の特定がない財源=一般財源) →国庫支出金などの補助金=特定財源(義務教育費負担金、生活保護負担金など) ○地方税 ・地方税収は4割前後 →先進国のなかで日本の地方税...

第8回「CAHPTER7:地方自治体の権能と大都市制度」

  ■事前準備 テキストの該当ページを読んでおいてください 宿題(P.115のエクササイズ1)の確認 ■レジュメ 1.地方自治体の種類 〇二層制 ・基礎自治体:市町村、東京都特別区(23区) ・広域自治体:都道府県 →法的には上下関係ではなく対等 ・かつては「郡」が存在し、三層制だった →府県制、郡制、市町村制 →1921年に郡は廃止されたが、住所や郵便の分類などの地理区分として残っている 〇市町村および東京都の23特別区 ・市区町村 →直接公選の首長と議会が設置 →教育、福祉などの行政サービスを提供 ・市の要件 →地方自治法に規定されている ・町の要件 →各都道府県の条例で規定されている →ex.北海道(129町) ・村の要件 →市町以外の地方自治体 →村のない県が13存在する(広島、滋賀、香川) ・東京都特別区(東京23区、東京都区部) →1943年に廃止された東京市の市域に相当する部分に設置されている(東京35区) →1947年3月に35区を22区に再編。同年8月に板橋区から分離して練馬区が成立し、現在の23区へ →制度的な性格は現在もあいまい(あくまで東京都の内部機関という位置づけ) →地方分権一括法(2000)により、「基礎的な地方公共団体」と位置づけられた →税財政の違い(固定資産税、都市計画税の徴収。都区財政調整制度の存在) 〇都道府県 ・かつては「中央政府の出先機関」 →官選の知事が、各府県で中央政府による政策全体を統括していた ・北海道と府と県の機能的な差はない ・東京都は上下水道、消防を直接提供。県警本部のかわりに、警視庁を設置 〇一部事務組合と広域連合 ・一部事務組合 →地方自治体が事務の一部を共同して処理するために設置される法人格を持つ機関 →設置目的はごみ処理、し尿処理、消防、救急など ・広域連合 →広域にわたり処理することが適当であると認められた事務を処理するために設置される法人格を持つ機関 →設置目的は後期高齢者医療、介護区分認定審査、障害区分認定審査 ・関西広域連合の存在 →事務を垂直保管、水平的連携することによる自治体の生き残りが必要な時代 2.地方自治体の権能 〇権能からみた関係 ・都道府県と市町村の機能分担 →都道府県は警察行政や義務教育の人事などで重要な役割 ・権限の一部移譲 →政令指定都市、中核市、特例市 ・東京都特...